CRAFT NIHON WINE / NOW
テーマ:オレンジワインいま知っておきたい、日本のオレンジワイン。味わいと楽しみ方をやさしく解説
白ぶどうを果皮とともに醸すことで生まれるオレンジワイン。ジョージアの伝統から日本の「醸し」、味わい、料理との合わせ方まで、初めての人にもわかりやすくたどります。
3分でわかる
THIS ARTICLE AT A GLANCEそもそも、オレンジワインとは?
オレンジワインは、基本的には白ぶどうから造られます
ルーツをたどると、ジョージアの伝統へ
オレンジワインを語るとき、よく登場するのがジョージアです
「醸し」で何が変わるのか
ワインの世界では、果汁を果皮と接触させながら発酵させることを「醸し」と表現します
どんな味? 最初に知っておくと楽しみやすいポイント
初めて選ぶときは、「白ワインより少し複雑で、赤ワインより軽やかなことがある」と考えるとイメ…
オレンジワインという名前を、ワインショップやレストランで見かける機会が増えました。色合いは黄金色から琥珀色、時には淡いピンクを帯びたものまでさまざま。見た目だけでも少し気になる存在ですが、「オレンジの果実から造るの?」「白ワインとは何が違うの?」と感じる人も多いはずです。
オレンジワインは、決して難しい人だけのワインではありません。むしろ、白ワインと赤ワインの両方の面白さを少しずつ持ち、料理と一緒に楽しむことで魅力が見えやすい、とても自由なカテゴリーです。ここでは、そもそもオレンジワインとは何なのか、その背景や味わい、日本での広がり、そして食卓での楽しみ方まで、初めての人にもわかるように順番に見ていきます。
そもそも、オレンジワインとは?
オレンジワインは、基本的には白ぶどうから造られます。普通の白ワインでは、ぶどうを搾ったあと、果皮や種を早い段階で果汁から離して発酵させることが一般的です。それに対してオレンジワインでは、白ぶどうの果汁を果皮や種と一緒に一定期間発酵させます。
この「果皮と一緒に醸す」工程は、赤ワインの造り方に近い考え方です。赤ワインの色やタンニンが黒ぶどうの果皮から引き出されるように、白ぶどうでも果皮と長く触れさせることで、色合いだけでなく香り、渋み、旨み、口当たりの厚みなどが加わります。その結果、通常の白ワインよりも黄色や琥珀色が濃くなり、英語では“amber wine”と表現されることもあります。
つまり「オレンジ」という名前は果物のオレンジを使うからではなく、出来上がったワインの色調から広まった呼び方です。ただし、すべてが鮮やかなオレンジ色になるわけではありません。淡い黄金色のものもあれば、深い琥珀色のもの、品種によってはピンクや銅色を感じるものもあります。
ルーツをたどると、ジョージアの伝統へ
オレンジワインを語るとき、よく登場するのがジョージアです。コーカサス地方に位置するジョージアには非常に古いワイン文化があり、白ぶどうも果皮や種と一緒に仕込み、大きな素焼きの甕「クヴェヴリ」で発酵・熟成させる伝統的な醸造が受け継がれてきました。
クヴェヴリは地中に埋めて使われることが多く、温度が安定した環境の中でワインがゆっくりと育ちます。現代に世界中で造られているオレンジワインが、すべてジョージアの伝統製法そのものというわけではありません。それでも、「白ぶどうを果皮とともに醸し、その成分をワインに取り込む」という考え方を理解するうえで、ジョージアの文化は大切な背景です。
近代的な白ワインの多くが透明感やフレッシュさを求めて果皮との接触を短くしてきた一方、果皮と一緒に醸す方法には、ぶどうをより丸ごと使うような感覚があります。古くから存在した方法が、現代の造り手たちによってあらためて見直され、多様なスタイルとして世界各地に広がっている。オレンジワインの面白さは、そんな古さと新しさが同時に存在するところにもあります。
「醸し」で何が変わるのか
ワインの世界では、果汁を果皮と接触させながら発酵させることを「醸し」と表現します。時間は造り手によって大きく異なり、比較的短いものもあれば、長期間じっくり接触させるものもあります。この長さや温度、ぶどう品種、発酵方法などによって、同じオレンジワインでも味わいは大きく変わります。
果皮からは色素だけでなく、香りの成分やフェノール類、タンニンなどがワインへ移ります。これによって普通の白ワインにはあまり感じない軽い渋みや、口の中をつかむような質感が生まれることがあります。この「白ワインなのに少し渋い」という感覚が、初めて飲む人には驚きかもしれません。
ただし、オレンジワイン=強い渋み、というわけでもありません。軽く醸したものなら、やわらかな果実味の中にほんの少し輪郭を感じる程度のものもあります。反対に、しっかり醸したものでは紅茶や乾燥した果実、柑橘の皮、ハーブやスパイスを思わせる複雑な印象が出ることもあります。
だから、オレンジワインは一つの味ではありません。「白ぶどうを果皮とともに醸す」という大きな考え方の中に、とても幅広い味わいが存在しています。
どんな味? 最初に知っておくと楽しみやすいポイント
初めて選ぶときは、「白ワインより少し複雑で、赤ワインより軽やかなことがある」と考えるとイメージしやすいでしょう。
香りには、熟したりんごや洋梨、あんず、オレンジピールのような果実のニュアンスを感じることがあります。そこに紅茶、乾燥したハーブ、ナッツ、スパイスなどを連想させる香りが重なるタイプもあります。もちろん、実際の味わいはぶどうや造り方によって大きく異なります。
口当たりでは、白ワインらしい酸味や軽やかさがありながら、舌や歯茎にわずかなタンニンを感じることがあります。このタンニンが料理の脂や旨みと結びつくことで、単独で飲んだときよりも食卓で魅力が開くことがあります。
「香りが少し個性的だったけれど、料理と合わせたら急においしく感じた」という経験が起こりやすいのも、このカテゴリーの面白いところです。
オレンジワインは、どんな料理に合う?
オレンジワインの強みは、料理の守備範囲が広いことです。白ワインなら少し負けてしまいそうで、赤ワインでは少し重い。そんな料理の間を埋めてくれます。
たとえば焼き鳥。塩なら白ワインでも合わせやすいですが、皮やつくね、少し香ばしく焼いた部位になると、オレンジワインの軽いタンニンと香ばしさがよく働きます。タレの甘辛さにも、果実味のあるタイプなら自然に寄り添います。
和食では、味噌や醤油、だし、きのこ、根菜など、旨みや発酵のニュアンスを持つ料理と試してみたいところです。西京焼き、豚肉の味噌焼き、きのこのバターソテー、根菜の煮物など、白・赤どちらを選ぶか迷う料理に面白い選択肢になります。
中華料理やエスニック料理も好相性の候補です。春巻きや焼売、香辛料を使う鶏料理、クミンやコリアンダーの香る料理など、香りに複雑さがある食事にもワインが負けにくいからです。チーズや生ハム、ナッツを並べた軽い食卓でも楽しめます。
重要なのは、「オレンジワインに必ずこの料理」と決めすぎないこと。渋みが軽いものなら魚介や野菜へ、しっかりしたものなら肉や発酵食品へ。ワインの強さに合わせて料理を考えると選びやすくなります。
日本ワインとオレンジワインの相性
日本でも、白ぶどうを果皮とともに醸すワインは以前から造られてきました。特に日本を代表する白ぶどうの一つである甲州では、「甲州醸し」という表現を目にすることがあります。甲州を果皮とともに醸して、色や香り、旨みを引き出したスタイルです。
こうした甲州醸しを広い意味でオレンジワインとして紹介するケースもあります。ただ、すべての造り手が同じ呼び方や定義をしているわけではありません。「醸し甲州」「アンバーワイン」「オレンジワイン」など、背景や意図によって表現が異なることもあります。
ここは難しく考えるより、「白ぶどうの果皮まで使って表現を広げたワイン」と捉えるとわかりやすいでしょう。甲州だけではありません。デラウェア、シャルドネなど、日本で育つさまざまな白ぶどうが造り手の解釈によってオレンジワインになっています。
地域によって気候もぶどうも異なり、小規模な造り手が多い日本ワインでは、同じカテゴリーでも個性が出やすいのが魅力です。軽快で早い時間から飲みたくなるものもあれば、食事と時間をかけて向き合いたいものもあります。
なぜ、いま注目されているのか
近年は、レストランやワインバーでもオレンジワインを見かける機会が増えました。背景には、単純に新しい色のカテゴリーだからというだけでなく、現代の食卓との相性があります。
料理のジャンルはますます自由になり、和食、洋食、中華、エスニックを一つの食卓で楽しむことも珍しくありません。オレンジワインの幅広さは、こうした境界のない食事に合わせやすいものです。
また、造り手にとっても果皮との接触時間や発酵の考え方によって表現を大きく変えられるため、土地やぶどうの個性を独自の方法で見せる余地があります。日本でも多くの造り手がそれぞれの解釈で取り組み、飲み手側も「オレンジワイン」という入口から新しいワイナリーや土地へ出会えるようになってきました。
今回、外部情報の観測でもオレンジワインをめぐる動きが強く見られています。日本ワインコンクール2026でオレンジワイン部門が新設されるという動きも、カテゴリーへの関心の高まりを象徴する出来事の一つです。いまは、単なる流行としてではなく、日本ワインの多様性を知る入口として見ておきたいタイミングと言えそうです。
初めてなら、どう選べばいい?
初めて飲むなら、商品説明の中で「軽やか」「フレッシュ」「短い醸し」などの印象が読み取れるものから入ると親しみやすいでしょう。逆に、普段から赤ワインや個性的なナチュラルワインが好きなら、しっかり醸したタイプや複雑さのある一本を選ぶのも面白いです。
泡のオレンジワインもあります。果皮由来の風味に泡の軽快さが加わるため、「オレンジワインは少し難しそう」と感じる人にも入りやすい選択肢になり得ます。
そして、ぜひ料理と一緒に。最初の一口だけで判断せず、ひと皿食べて、もう一度ワインを飲んでみる。その変化を楽しむことが、オレンジワインへの近道です。
いま、CNWで見ておきたい日本のオレンジワイン
ここまで読んで「実際に飲んでみたい」と思ったら、最後に具体的な日本ワインを見てみましょう。CRAFT NIHON WINEでは、いま実際にCWSと連携している商品の中から、このテーマにつながるワインを紹介しています。
宮城県のFattoria AL FIOREからは「Anco 2024」「Arancia 2022」「PASSO A PASSO Arancia 2023」など、複数のオレンジワインを見ることができます。同じ造り手でも銘柄が違えば表情は変わります。まずはラベルやぶどう、紹介文を読み比べて、自分が惹かれる一本を探してみてください。
オレンジワインは、「こういう味でなければならない」という狭いカテゴリーではありません。その自由さこそが魅力です。ジョージアの古い醸造文化から、日本の甲州醸し、各地の小さな造り手の挑戦まで、一杯の中にさまざまな背景がつながっています。
次にワインを選ぶとき、白でも赤でもなく「今日はオレンジにしてみよう」と思えるようになったら、選択肢は一気に広がります。まずは食卓に一本。そこから、自分にとって好きなオレンジワインの輪郭を見つけてみてください。



